当店の柘植(つげ)印材はすべて国産(鹿児島産)の薩摩本柘植を使用しております。
(タイやカンボジアなどから輸入された印材は、柘植ではなくアカネと呼び国産品とは区別して表示されます)
近年、木目が多い・細かいシミがある・ニスだまりが見られるなど柘植印材の質が低下しておりましたので、小林自身の目で産地を回り、確かな素材を仕入れるため鹿児島へまいりました。
最高の品質と最高の素材を求めて、まずは鹿児島県頴娃町(えいちょう)という人口1万5千人ほどの小さな町を訪ねました。(現在は南九州市頴娃町)
以前から、薩摩地方では柘植の木を植林していると聞いていましたので、訪問前はてっきり山の奥にたくさんの柘植の木が植林されているものとばかり思っていました。しかし、実際には農家の庭先や畑のとなり、休耕地など家のまわりの平地や小高い丘の上に整然と植林されていてびっくりしました。
薩摩地方では、200年ほど前から柘植の櫛(くし)や将棋の駒、そろばんの珠、近年では印鑑の材料として農家の皆さんと製材業者が計画的に植林をして、「柘植のまち」としての歴史と伝統を守り続けているそうです。
植林から20年ほど過ぎると、いよいよ伐採され製材業者に到着します。
頴娃町にある製材業W印材さんを訪問しました。
W社長は、大変丁寧に柘植についての歴史と現状を教えてくださり、町内の植林風景や古くからお付き合いのあるおばあちゃんや農家の皆さんを1件1件ご紹介くださいました。
大きく成長した柘植の木は、9月以降に仕入れ1メートルほどの大きさに切りそろえた後、2階の倉庫にて約1ヶ月ほど寝かします。
十分安定した木材の皮を丁寧に削り取ったあと7センチの高さに切りそろえられます。(直径約20センチ)
その後、手作業にて電動のこぎりを使い、印材のサイズ通りの角材に切りそろえられていきます。
まさに神業、職人の作業は正確ですばやく次々に切られていきます。よく指を切らないものだと感心することしきり・・・
切りそろえられた角材は、さらに屋上にて天日で2週間ほど乾燥させます。
南国の日光と潮風に当てることによって印材にくるいが生じなくなるそうです。
帰り際さらに驚いたことは、社屋の横に大量につまれた木片と木くずの山でした。
少しでも木目に「シミが出ていたり」「キズや割れ目」が出ている材料はB級品となるためほとんどが焼却処分されてしまうそうです。ここにも、大変なこだわりがありました。
非常にもったいないと思いましたが、ここで妥協をすることによって薩摩本つげの「質」が低下し価格が落ち、結局は栽培農家さんや印材業者にとってマイナスとなるため本当に質のよい商材のみを出荷しているとのことでした。近年はB級品に色をつけてカラー柘印材として販売している試みもされていました。
小林の見たところでは決してB級品ではありませんでした。
薩摩本つげが、「世界で最も高い木」と言われるゆえんがここにありました。
次に頴娃町のWさんから、角材になったつげ印材を仕入れて、丸や四角の印材に加工する佐賀県のI社を訪ねました。
I社のF社長も柘植に関しては大変なこだわりと誇りを持って製造加工されており、当店の小林が考える印鑑に関するこだわりと同じような心意気を強く感じました。
頴娃町から届いた角材は、3ヶ月ほど工場内で寝かせ乾燥させます。
植林された木材が伐採されてから、佐賀の工場で加工するまで約6ヶ月の月日がかかることになります。
十分に寝かし、狂いのない柘植素材はオートメーション化された工場にて寸分の狂いも無く、丸印や角印の材料に仕上げられていきます。
「印鑑」は単に道具というだけでなく、お客様自身を証明する大切な「証」となります。その証である印材にも、当店は強いこだわりを持っています。
4代目小林照明が自ら製造元に出向いて目利きをし、間違いないと確信した印材しか取り扱っておりません。ですから、当店の黒水牛、牛角白、本つげは、どれをとっても印材によって運気が変わることはございません。
いずれも会社ご印鑑として末長くお使いいただける吉印材だと考え、感謝と畏敬の念を込めお彫りいたしております。
お客様ご自身が「気に入ったもの」「使って気持ちのよいもの」こそが最高の吉印材です。
どうぞご自身の感性を信じて、ご希望の印材とサイズをお選びください。